溺愛ドロップス
高校生活初日、しかも幕開け早々朝からあたしってば運悪すぎじゃない?
お化粧と髪はバッチリキマったと思ったら時間が迫って遅刻しそうになるし。
キマった髪も結局は猛スピードで走った自転車の所為でボサボサ。
うぅ…、こんなの泣きたくもなるっつーの。
未だ自転車から降りようとせず、いい加減にしろよと言いたげに沈むあたしを見ていた零は不意に「直せばいいだろ。」くしゃくしゃとあたしの髪を触り出した。
『…っ、なにすん、』
「黙ってろって。直してやってんだから。」
むむむ。なによエラそーに。
上から目線の言い草にムッと唇をへの字に曲げてそう思うけど、でも零が言う通りボサボサになったなら直せばいいんだ。
…そっか。そうだよね!
見つけた解決策はすごくシンプルなもの。なんだ。別に泣くことなかったじゃん。
ボサボサの髪が元に戻るとなったあたしは瞳を濡らしていた涙をパチパチ瞬きして弾き、鼻唄まで口ずさんじゃうほどのテンションの回復ぶり。
そんなあたしを零はバカだろ。と言って、幸せな奴。と呆れながら小さく笑った。