溺愛ドロップス



『な、なんで…っひょ!?』

「痛ってぇだろがコラ。一瞬息止まったんですけど。」

『あひゃひゃっ。らっらっへ…っ!』

「あ?だって、何?」

『………らんれもないでふ。』



くっそ〜。笑顔が怖い!笑顔がっ!しかも頬っぺた痛い〜!



ひくひくと口元を引きつらせ、唇を開いたあたしに零は頭を掴んでいた手を移動させて今度は頬っぺたを摘まんできた。



それはもうギュギューッと強く。



不格好に片方だけ引っ張られて伸びる頬っぺた。



だって、から始まるセリフの殆どが言い訳だと昔零に言われたことがあるけど、零に突進した理由は言い訳なんかじゃなくほんとのことだ。



だってのあとに"零があたしを置いて行ったから"と言おうとしたら、言わせまいと顔は笑っているのに目が笑っていない笑顔でそれを阻止してきた零。



そんな笑顔に勝てるはずもなく、何でもないと言うしかないあたし。



その笑顔はせこすぎると心の中でヤジを飛ばすけど、それよりも今は頬っぺたが痛くてたまらないからもう許して欲しいっていうのが本音。



痛みで視界もゆるゆる潤みぼやけてくる。


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