溺愛ドロップス
何だ何だ何なんだ。タメ息吐かれる筋合いなんかあたしにはないよっ。
心底うざったそうにもう一度タメ息を吐く零を涙目でキッと鋭く睨み見上げると、零は突然「俺行くとこあっから。」話をガラリと変える。
「体育館の場所知ってっだろ?一人で行けよ。じゃあな。」
『……は!?ちょっと待ってよっ。』
「無理。待ってなし。体育館行きゃあ誰か居んだろ。」
『違…っ、ぜ、』
「しつこい。もうお前の相手はしてらんねぇの。」
あたしが言おうとした言葉を遮って、ピンッとおでこに指を痛くない程度に弾くと零は背を向け行ってしまう。
頬っぺたを摘まれたことに関してはよくないけど今はもうどうでもいい。
それよりももっと最悪なことが起こった。
あたし、体育館の場所忘れちゃったよ…。ていうか知らないんですけど。
入学式の時に確かに体育館に行ったけど、でもあたしは周りの景色の方に目がいっちゃって、体育館の道なんかこれっぽっちも覚えていない。
周りの人の流れに乗って体育館に行ったって感じなのだ。
だから、一人で体育館に行けるはずがないあたしはそれを零に言おうとしたのに、零は聞いてもくれなくて行ってしまった。