溺愛ドロップス
使い物にならない携帯はポケットに直し、一気にテンション下り坂なあたしはこの場から体育館への道も分からないまま歩き出す。
適当に歩けば辿り着けるだろう。
そう途中で思って数分間てくてく歩いてみたけど、体育館に着くどころか同じところをぐるぐる回ってるような――…あれ?
駐輪場からは離れたものの、そこから同じ校舎を何度も見ている気がするあたしは立ち止まり首を傾げる。
どこだ?ここ。
ぐるりと周りを見渡すけど体育館らしき建物は見当たらない。
『…。』
とうとうあたしは式に出るのも体育館探すのも諦めてしゃがみ込んでしまった。
もういいもん。この学園広すぎるんだバーカ…。
さっきはあれだけ零にヤジを飛ばせていたのに、今はテンションが下がる一方で愚痴を零す気にもならない。
そんなあたしは自分で言うのもなんだけど多分かなり珍しい。
電話を掛けた人が出ないのは式が始まっているからなんだろうな…。
ぼんやりと雲がのんびり流れる空を仰いでそんなことを思っていると、不意に鼓膜を擽る微かな声。