溺愛ドロップス



あたしと、乱れた女の子と胸に顔を埋める男の子との間には少し距離がある。



だけど発せられた声は普通の音量でも十分に聞こえる短い距離で。



確かに、あたしの耳には"なんか用?"そう言った男の子の低い声が届いた。



ちゃんとあたしに向けられてるって分かってる。けど。だけど――…。



目の前の光景が有り得なさすぎて、零やもう一人の兄貴でこんな…今目の当たりにしている似たような光景に何度か遭遇したことがあるけど、固まることしかあたしは出来ない。



しかも、目の前のは特にだ。有り得ない。ほんとに有り得ない。



まだそういった経験はこれっぽっちもないけれど、普通は外でしないでしょ!?



もっとロマンチックに綺麗なとことか、別にそういうとこじゃなくても彼氏の部屋で――…とか。そんなとこですることなんじゃないの?



固まったまま、有り得ないと、心の中で思い続けるあたしに近付いてくる存在。



後ろで怒る女の子は無視して、あたしの真ん前に立った存在――…胸に顔を埋めていた男の子は「…おい。」あたしの頭を手で掴んできた。それも、ガッシリと。



え、なにこれ。デジャブ?


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