溺愛ドロップス
『……っ!!』
影は完全にあたしに被さり、動いて近付いた綺麗な顔は見開いている瞳にドアップで映り込む。
グロスを塗った唇には柔らかく生暖かい感触が触れていて、かと思ったらすぐに唇を割ってするりと侵入してきた"何か"。
口の中にその"何か"が入ってきて、グッと眉間にシワを寄せ見開いた瞳は瞼の裏に隠すあたし。
頭を掴んでいた手はいつの間にか頬っぺたを包むように添えられていた。
やだ…。なに、これ…。
口内で好き勝手動く"何か"。それから逃げようとするあたしの舌を逃がさまいとすぐさま絡め取ってきて。
こんなの今まで経験したことないし、身体中が熱くなって頭はふわふわして何も考えられないし、息が出来なくて苦しくて、力が抜けてもう立っているのもやっとのこと。
それでも、口の中で動く"何か"は口の中からまだ出て行ってくれそうになくて、膝は曲がり、ギュッと握ったワイシャツで体勢を保つので精一杯だ。
そんなあたしに気付いたのか、頬っぺたを包んでいた片方の手が下へと下り、あたしの腰を支えた――…と、同時に。
「…っ琉臥のバカッ!」
怒気を含んだ女の子の声が叫んで、パタパタと走っていく音が朦朧とする意識の中、うっすらと聞こえた。