溺愛ドロップス
口を閉じたまま、男の子が笑うのを止めて「…ふーん。経験あんだ?」また再度口角を上げ、意地悪く瞳を細めるまで動かなかったあたし。
絵になっていた笑う姿に見惚れていた、と動かなかった理由は正直それで。
頬っぺたに手を添えられ、固まっていた身体はピクリと跳ねた。指にはめられている指輪がひやりと冷たい。
「今度、俺とシよっか?」
『ふ、えぇ!?な、何…』
「セックス。経験あんでしょ?」
『…っ!』
「ん?」
『…っあーあー…うん。そそそそうだね!』
ふわり、ピンクブラウンの髪を揺らしながら「楽しみにしてる。」だなんて満足げに爽やかな笑顔を浮かべた男の子が酷く恨めしい。
きっと。いや、絶対。男の子はすでにもうあたしの嘘を見抜いてる。処女だって気付いてる。
シよっか?と言われた直後、意味が分かったあたしの頬っぺたはかぁっと赤に染まっていった。
動揺を隠しきれてない。泳ぐ瞳。どもる言葉。全部、嘘だって自分から言っているようなものだ。
嘘だって分かってて、今度エッチしよ、なんて誘う男の子はかなり意地悪。サディストにもほどがある。