溺愛ドロップス
だけど、零は睨まれてるっていうのに憎たらしい表情を崩さず、形のいい薄い唇を開いて言う。
「高1にもなって時間管理も出来ねぇまぬけを呼びに来てやったんだろーが。感謝されてもバカ呼ばわりされる筋合いはねぇ。」
いちいち一言二言多い癇に障る言い草にカチン、どころかプッチンと堪忍袋の緒が切れそうだ。
バカ呼ばわりすることあっても感謝することなんかねぇよ。と、心の中で悪態ついて、ふと、何気なく零から壁に掛かる時計に目をやると――…。
『えぇっ!もう8時過ぎてる…!?』
先がハート型になっている時計の針は8時どころか8時10分を過ぎたところを指していた。
ま、マジでこれはやばい!本気でやばい!高校生活スタート早々遅刻しちゃう!
『ぜ、零〜…。』
「あ?俺知らね。」
学園は自転車で20分掛かるところにある。
8時30分までに学園の中に入らないともうそこで遅刻が決定してしまうわけで。
化粧や髪を巻いていたあたしはもちろん未だルームウェアに身を包んだまま。
制服に急いで着替えて鞄に荷物を詰め込んで家を出たとしてもその作業に最低5分は掛かってしまう。
そうなれば時計の針は10分から15分に移動して、残り時間15分弱…。