溺愛ドロップス
うぇぇ…。もうどっかに行っちゃったの!?
風に乗ってやって来たのか桜の花びらが落ちている地面を見てガックリ、肩を落としてしまう。
早すぎだよ〜…。
男の子が居ないんじゃあ仕方ない。自分の勘をやっぱり頼るしかないのか。…超不安だけど。
この学園の中に居る限り、あっち行ったりこっち行ったり、いろいろと道を試していれば絶対に教室まで行けるはず。
無理なんてないんだ!
気合いは十分。遅刻なんて慣れてしまっている。上等だ。怒られたらごめんなさい、って謝ればいーんだもんっ。
今までそれで乗り越えてきた。
浮かんだ涙をゴシゴシ、新品のブレザーの袖で拭う。
また、再度踵を返したあたしの唇には瞬間。ぷちゅっと温かくて柔らかいものが触れた。
「やっぱ迷子なんじゃん。嘘つき。」
驚いた、なんてものじゃない。
唇から離れた温もり、柔らかさ。見開く瞳の中にはドアップで映る端整な美顔。
どこかに行ってしまったと思って諦めた男の子が目の前に居る。
『え、え、な、何で…。』
驚きすぎて舌が上手く回らない。