溺愛ドロップス
何で。理由を聞こうとする前に「行くぞ。」そこから素早く腰を上げた零にタイミングを逃され、中途半端に開いた口。
だけど、理由はちゃんと聞いておきたいわけで。かなり気になるし。
あたしを置いて先をすたすたと歩く零にあたしはパタパタ、慌てて追い付き、『何で!?』単刀直入に声を上げた。
案の定、顰めっ面をする零。
「何が。」
『何で居んの!?』
「知らね。」
『何で!?ねぇ、何で!?』
「…。」
『何で何で何で何っ…ふぎっ!』
「るっせぇブス。さっさと乗れよ。」
あたしを待っていた理由を知りたいからただ、しつこいとは思うけど聞いているだけなのに、零は教えてはくれず。
さらにはあたしの両方の頬っぺたを大きな片手でむぎゅっと挟んできた。
必然、あたしの口はあひるのくちばしみたいになるわけで。
『ひゃにふんの!』
「いいから黙って乗れよ。」