足跡たどって

「いや、むしろこっちが、ごめん。やっぱり、俺も一緒に行った方がよかったかなとか思ってたんだ。小糸ちゃん一人であの二人と一緒って、キツイっしょ。」

石川君は、苦笑気味に言った。

「正直ヤバイよ。居心地悪いし店員さんとか、超怖かったもん。」

私の言葉に石川君が、吹き出した。

「何それ。ちょっと見たかったかも。」

「人ごとだと思って〜。かなり怖かったんだからね。」

クスクス笑っている石川君のことを軽く叩いた時、石川君の向こうに座っている一平ちゃんと目が合った。

その時、なぜか一平ちゃんの目は、いつもみたいに馬鹿にしたみたいな笑みを含んでいなくて、いたたまれなくなった私は、目を逸らしてしまった。

「仲いいんだね。」

おい、私のバカ!

なに、目を逸らしてるんだYO!

一平ちゃんの声は、怒っていないけれど、突き刺さるような視線を感じる。

「お小糸ちゃんて、いい奴だよな。楽しいし。日吉って、小糸ちゃんと幼馴染なんだろ。うらやましいな。」

仏の石川君の褒め言葉は、ありがたいが・・

「褒めすぎでしょう。てか、石川君。そんなこと、私に言わないで、ゆ・・」

由美ちゃんと言いかけて、石川君に口をふさがれた。

「ちょっと、小糸ちゃん。恥ずかしいから。」

石川君は、ヒソヒソ声で抗議してきた。

「どうしたの?」

一平ちゃんは、怪訝な顔で私達を見た。

「いや、なんでもないよ。ちょっとね、小糸ちゃん。」

そう言いながら石川君は、私を小突いてくる。

「そうそう。」

ひきつった笑いでなんとか誤魔化した私達を一平ちゃんは、見比べた。

「二人って、さあ・・」

「あ、いたいた。お〜い、花!」

一平ちゃんの言葉は、若菜ちゃんの高い声にかき消されてしまった。

< 10 / 30 >

この作品をシェア

pagetop