足跡たどって
「いや、むしろこっちが、ごめん。やっぱり、俺も一緒に行った方がよかったかなとか思ってたんだ。小糸ちゃん一人であの二人と一緒って、キツイっしょ。」
石川君は、苦笑気味に言った。
「正直ヤバイよ。居心地悪いし店員さんとか、超怖かったもん。」
私の言葉に石川君が、吹き出した。
「何それ。ちょっと見たかったかも。」
「人ごとだと思って〜。かなり怖かったんだからね。」
クスクス笑っている石川君のことを軽く叩いた時、石川君の向こうに座っている一平ちゃんと目が合った。
その時、なぜか一平ちゃんの目は、いつもみたいに馬鹿にしたみたいな笑みを含んでいなくて、いたたまれなくなった私は、目を逸らしてしまった。
「仲いいんだね。」
おい、私のバカ!
なに、目を逸らしてるんだYO!
一平ちゃんの声は、怒っていないけれど、突き刺さるような視線を感じる。
「お小糸ちゃんて、いい奴だよな。楽しいし。日吉って、小糸ちゃんと幼馴染なんだろ。うらやましいな。」
仏の石川君の褒め言葉は、ありがたいが・・
「褒めすぎでしょう。てか、石川君。そんなこと、私に言わないで、ゆ・・」
由美ちゃんと言いかけて、石川君に口をふさがれた。
「ちょっと、小糸ちゃん。恥ずかしいから。」
石川君は、ヒソヒソ声で抗議してきた。
「どうしたの?」
一平ちゃんは、怪訝な顔で私達を見た。
「いや、なんでもないよ。ちょっとね、小糸ちゃん。」
そう言いながら石川君は、私を小突いてくる。
「そうそう。」
ひきつった笑いでなんとか誤魔化した私達を一平ちゃんは、見比べた。
「二人って、さあ・・」
「あ、いたいた。お〜い、花!」
一平ちゃんの言葉は、若菜ちゃんの高い声にかき消されてしまった。