足跡たどって
「石川君、由美ちゃんからだよ。昼ごはんをどこで食べるかのメールじゃない。」

石川君の体が、ビクンと大きく震えたのが、分かった。

「なになに。えっ・・・。」

「こ、小糸ちゃん。どうしたの?」

内容を見た私が、黙ってしまったので、石川君が、心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「石川君。気を強く持って聞いてね。」

大げさな私の言葉に石川君は、唾を飲み込んだ。

「由美ちゃんね。えっと、言いにくいんだけどね。・・お化け屋敷に並ぶのに時間かかるから、並びながらお昼食べるって言ってる。」

マイペースな由美ちゃんらしいといえば、由美ちゃんらしいけど。

明らかに気落ちした様子の石川君が、かわいそうで・・。

「あのさ、じゃあ、提案なんだけど。完全に二人っきりとはいかないけれど、それでもいいなら。」

がっくりとうな垂れていた石川君が、ぱっと顔を上げた。

「とりあえず、今から由美ちゃんと一緒に並んでお化け屋敷に三人で入って、途中から私が、抜けるっていうのは、どうかな?」

私の提案を聞いた石川君の顔が、明るくなった。

「いいの?小糸ちゃんは、大丈夫?」

「もちろん。」

私は、まかせなさいとばかりに胸をドンと叩いた。

・・そんなうれしそうな顔をされたらさ。

今更、言えやしないよ。

私の三大嫌いなものが、テストとゴキブリと・・お化けなんて。
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