足跡たどって

「何だよ、急に。」

一平ちゃんは、怪訝そうに私を見た。

「ただ聞いてみたかっただけ。私のこと好き?」

もう一度聞いたら、一平ちゃんは、ちょっと考え込んだ。

「よく分かんないけど。班を決めるのにうだうだ時間がかかるやつとかジェットコースターが乗れないやつよりは、ましかも。」

「あっそ。」

予想通りの返事に私は、ほっとしたようながっかりしたような複雑な気分だった。

昔とほとんど変わってないよね。

「そっちは、どうなんだよ。」

しんみりした気持ちで物思いにふけっていた私を一平ちゃんの言葉が、現実に引き戻した。

「私?」

「そうだよ。最近、避けてばっかりで感じ悪い。」

驚いて聞き返すと、一平ちゃんは、ちょっと不機嫌そうな声で言った。

「別にそんなつもりじゃなかったんだけど。」

しどろもどろに言い訳した瞬間だった。

「じゃあ、どういうつもりだったんだよ!」

聞いたこともないような怒鳴り声が、上から降ってきた。

「ちょっと、一平ちゃん。皆見てるって。私が、悪かったから。謝るから、今日はやめよう。」

通り過ぎる人達からの視線が、痛い。

もし学校の子に見られたら、後で何を言われるか分からない。

「俺のこと、嫌いなんだろう。」

一平ちゃんの感情を殺した低い声に私は、驚いて顔を上げた。

「ち、ちがうよ。」

「じゃあ、なんで避けてたんだ?」

一平ちゃんの顔が、近づいてくる。

じりじり迫ってくる一平ちゃんに私は、思わず、後ずさりすると、小声で答えた。

「だって、最近一平ちゃんが、別人みたいだから。」

「は?」

一平ちゃんは、驚いたのが、分かった。
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