足跡たどって
「それって、ひがみだろ?何だっけ、俺の方が、背が高くて、足が速くて、顔がいいからだっけ?」

「顔がいいなんて言ってないよ!ちょっと、ちやほやされているからって、自意識過剰もいい加減にしなよ!」

腹立ちまぎれに反論した時、合流しに来た若菜ちゃんと前田くんの姿が、目に入った。

若菜ちゃんにこんな姿見られたら、後で何を言われるか分かったもんじゃない。

それにこれ以上、『みんなの日吉君』と一緒にいるのも気が引ける。

「そうだ、一平ちゃん。助けてもらったお礼にいいこと教えてあげる。」

「何だよ?」

突然ころりと態度を変えた私を一平ちゃんが、ちょっと驚いたように見た。

「一平ちゃんの班の女の子達は、多分ジェットコースターに『乗れない』んじゃないよ。」

「は?それって、どういう意味?」

「そのままの意味。だからさ。『俺、ジェットコースターに乗りたいんだけど、誰か隣に座ってくれない?』って言ってごらん。少なくとも、四回は、乗れるよ。」

班の女子が、順番に一平ちゃんの隣に座るから四回。

意味が分からないという顔をしている一平ちゃんに最後に忠告した。

「一平ちゃんも自分のしたいことをちゃんと言わなきゃ分かってもらえないよ。一平ちゃんが、なんでも『はいはい』頷くから班の女の子だって、それでいいのかなって思うって分かってる?ちゃんと言えば、その子達は一平ちゃんに喜んで欲しいって思ってるんだから、ちゃんと考えてくれるはずだよ。レディーファーストも行き過ぎると、失礼だから気をつけてね。」

一気にそれだけ言うと、呆然としている一平ちゃんを置いて、待っている若菜ちゃん達の方へ駆け出した。

言いたいこと言っちゃったけど、たまには、いいよね。
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