足跡たどって


洗面所で手洗いとうがいを済ませて、キッチンへ向かう。

「ただいま。」

キッチンで鼻歌を歌っているお母さんに声をかけた。

妙にご機嫌ですね。

「おかえり、花。お腹空いたでしょう。ちょっと、待ててね。今、おいしいシーフードカレーができるから。」

口調も優しいぞ。

調子に乗って、冷蔵庫に入っていたエクレアを食べても、お母さんは、何も言わない。

夕食前におやつを食べると、いつも怒るのに。

「良いことあった?」

「んふふふ。」

振り向いたお母さんは、満面の笑みを浮かべている。

ちょいと、母上。

気味が悪いよ。

「お母さんは、初恋の人と再会しちゃったのよ。」

お母さんは、レタスを手に持ったまま、うっとりしている。

それは、よござんす。

しかし、around40にもなって、初恋とは、本当にロマンチックな人だな。

「よかったね・・」

言いかけた私は、はたと止まった。

「あれ、お母さんの初恋の人って、たしか」

「日吉君よ。」

でた。

日吉。

恋といえば、日吉。
















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