足跡たどって
振り向くと、前田君の隣の窓側に座っていた石川君が、通路に出てきて、私の隣に立っていた。

クラスの全員と仲が良くて爽やかなスポーツ少年なのに、変わり種(人のこと言えた性格じゃないけどね。)の前田君と親友なのは、家が隣同士だからということだ。

悪気はないみたいなんだけど、辛辣な言葉を平気で口にする前田君とオブラードに包むムードメーカーな石川君は、結構いいコンビだと思う。

邪魔者なしで前田くんと回りたい若菜ちゃんの企みにより、私達の班は、四人だけ。

初めから、休むことが決まっていた男子二人を入れて組んだ班である。

二人の世界に入りつつある若菜ちゃんと前田くんは、おいておくとして、一緒に回る男の子が、気のいい石川君でよかったと思っている。

「うーん。とりあえず、人気のある絶叫系から乗りたいかな。多分、並ばないと乗れないと思うし。」

先に配られている園内マップを覗き込みながら、行きたいアトラクションをいくつか指差した。

「うん、いいね。帰りの集合時間が、結構早いから、急がないと乗れなくなっちゃうからね。」

予想通り、石川君は、焼けた顔に人懐っこい笑みを浮かべて、同意してくれた。

「ところでさ、」

そこまで言って石川君が、少し言い難そうに俯いた。

「何?石川君も行きたい所あるなら、言ってね。」

「ええと、そういうんじゃなくて。そのお、」

石川君の頬にほんのり赤みが差した。

おお、これは。

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