夕凪の花嫁
草可がスッと饅頭を差し出す。



真っ白でもちもちした饅頭が輝いて見える。



庵は戸惑いながらも饅頭を受け取りぱくっと一口かじると、口いっぱいにこしあんの甘みが広がる。



「おいしい……」

「でしょ?美味しいもの食べると元気でるし、癒されるよね。辛い事を無くす事も忘れる事もできないけど、それでも、こんな時だけは休もうよ。僕たちだって、心はあるし疲れちゃうんだから」



にこっと草可は笑い自分も饅頭を食べる。



「うん、美味しいねぇ」

「……おい草可」

「なあに?」

「お前だけ食うな!」

「やだなあ、庵くんも食べてるじゃない」

「屁理屈男め」



庵は思わず吹き出す。



「あっははははは」



夕凪と草可はそんな庵を見て笑みを浮かべた。



< 16 / 28 >

この作品をシェア

pagetop