夕凪の花嫁
夕凪と庵は一晩水に浸り身体を休め、草可が作った薬草粥(ヤクソウカユ)と沢庵(タクアン)の漬物を無言で食べていたが、夕凪がぼそっと呟く。



「なんで卵焼きがないんだ。普通、焼き魚とか卵焼きつくだろ」



大樹の枝に座って饅頭を食べていた草可は、当然の如く答えた。



「今の時代省エネなんだって。だから、それっぽく削っちゃった」

「省エネ?また遊佐(ユサ)の悪影響か」

「まあ確かに教えてくれたのは遊佐だけど。卵も魚も今高いし、がまんがまん〜」

「どうせ和菓子に回すためだろ」

「あ、ばれた?」



あまりにも悪気なくけらけら笑う草可の姿に夕凪はため息をつくと、今まで黙っていた庵が口を開く。



「遊佐って誰?」

「悪徳商人」



しれっと言う夕凪。



結局遊佐の事はよくわからず、庵は首を傾げるだけだった。



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