夕凪の花嫁
夕凪と庵が降り立った場所は、まるで荒野のように殺風景だった。



空は灰色で鈍よりしている。



「夕凪……守人は無事だよね」

「わからない。だが、急いで原因を突き止め対処する必要がある……庵、二手に別れるぞ」

「うんっ!」



夕凪と庵が駆け出す。



「紅火の国、風の国……ここまで荒れるなんて今まで例がない。ここにも琥珀姫の気配はない、か……あいつは、絶対見捨てるヤツじゃない。何かあったんだ……!」



走りながらも夕凪は琥珀姫への想いを口にする。



「琥珀……オレが絶対、見つけてやる」



それだけが、夕凪を駆り立てていた。



忽然といなくなってからずっと、ずっと――夕凪は琥珀姫を探し続けている。



もしも、ルールを破った事が罪なのなら……裁かれたっていい。






「オレが……オレだけが、罰を受ければいい話だ。……あいつの命さえ守れれば、それでいい」






それで、琥珀が守れるなら。






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