夕凪の花嫁
走っても、走っても、見えてくるのは鳥と人、そうでない者の死骸と同じ風景。



「ひどい臭いだな……」



そう呟き、ふとある匂いを夕凪は嗅ぎ取る。



「花……?」



どうして花の香りがするのか。この荒れ果てた地で、花は結びつかず夕凪は花の香りに導かれるまま走っていると、開けた場所に出た。



一本の巨木がそこにはあるだけで、他には何もない。



「確かに花だった……道を間違えたか?」



夕凪がそう口にした時、庵の声が後ろから聞こえた。



「夕凪!?」

「……庵」



振り向くとそこには、庵の驚いた顔があった。



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