夕凪の花嫁
「どうして夕凪が……?」

「花の香りがした。それをたどって来たら、ここに着いた」

「え……夕凪も、なんだ」



今度は夕凪が驚く番だった。これを偶然と考えるにはあまりにも出来すぎていて、庵も花の香りに導かれてここへたどり着いたのだったら。



夕凪は巨木を見上げる。



以前どこかで見たような気がする。……誰かと。



「…………桜」



“約束ですよ”



琥珀姫の花のような笑顔。



「――っ」



突然激しい頭痛に襲われ夕凪は頭を押さえ、地面に膝をつく。



「夕凪!どうしたの!?」



庵の声に応える余裕もなく、次第に遠くなり夕凪はその場に倒れた。



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