夕凪の花嫁
青年が桜の下に行くと、まるで来るのがわかっていたように、どこに隠れていたのか上から乳白色の長い髪に桜を飾った少女が降ってきて、青年がそれを受けとめる。



「天多!」

「風花(カザハナ)……ただいま」

「はい、おかえりなさい」



天多の腕の中で風花はとても嬉しそうに笑う。



夕凪は思わず息を呑んで風花を見つめた。少女の笑った顔が一瞬だけ琥珀姫の笑った顔と重なり、苦笑いを浮かべる。



「……ダメだなオレは」



どこにいても、何をしていても、追い求めてしまうのは――



その答えはひとつだけ。






君を、君だけが、好きだから。






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