ショートケーキ




『はい――――』



機械音から聞こえる今一番会いたくてたまらない人の声。


「俺、だけど――」


言いたい事はわんさかとあるのにいざ彼女に話すとなると言葉が出て来なくてずっとあのー、とかそのー、ばっかり連発してた。


何やってんだ俺、ちゃんと伝えるって決めたのに。


『何そんなにあのーとかそのーって言ってんのよ。言いたい事、あるんでしょ?私聞くよ?どんなことでも。』




そう言ってさっきの出来事を思わせないような、いつもね笑い声が機械ごしから聞こえた。



でも、彼女は泣いてる。だって声が震えてる。いつもの悲しい時の癖で拳を力強く握りしめてる。


「俺、お前に甘えてた。お前は強いと思ってたから、お前を見る事なんてしてなかった。毎日帰れば喧嘩で、どうしていいかわかんなかった。


でも、今日の事があってそれ全部俺がちゃんとお前と向き合ってなかったって思って、だから、だから、ちゃんと話そうって思って電話した。」




ジッとしてる事なんて俺には出来なかった。彼女の行きそうな場所を走り回ってやっと見つけた所が俺達が付き合うキッカケとなったプラネタリウム館にいて


後ろ姿がなんだか俺の心を安心させた。





ねぇ、今から君を愛する事は出来ないかな?


ねぇ、今からその震えてる肩を抱きしめる事は出来ないかな?




ねぇ、今から君を後ろから驚かせてもいいかな?



*王様ゲーム*

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