優しい雨
「実はさ、俺はちょっと前までは、人のことなんてどうでもいいと思っているような男だったんだ。上司が嫌いで、同僚との人間関係もあまり上手くいってなくてね。今思えば精神状態が荒れていたんだよな。なんて言うか、いつも心がささくれ立っているような感じでさ」

「亮が?」

こんな優しい彼に、そんな時期があったとは信じられない。

「ああ、毎日、何も面白いことがない中で仕事をしてたんだ。ただ営業だから移動とか独りでいる時間も長いから、まあどうにかやっていたけどね。
時々全て投げ出したくなっては、心の中で人のせいにしていた…上司のせいで仕事が上手くいかない、同僚に足をすくわれると本気で思い込んでいたんだ。
でもありさに再会して、俺、考え方が変わったんだよ」

「私に会って?」



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