優しい雨
「そうだよ。俺は高校の時も、どんなことも素直に受け止める、ひねた所がないありさを可愛いと想ってたよ。
そのありさに十何年ぶりに会った時は、お前が旦那の病気のことについて話すのを聞いて、昔のまんまなんでびっくりしたよ。何でそんなに辛い状況なのに当たり前のように話すのだろうと不思議に思ったくらいだ。
旦那の病気なんて不慮の事故みたいなもんじゃないか。ありさのせいでもなんでもないのに、お前は何の疑問も持たずに受け入れて、毎日頑張っていた。
いくら夫婦とはいえ他人だろう?嫌になって逃げ出したくなることがあっても不思議じゃなのに、愚痴一つこぼさずに尽しているありさを見て、俺は自分が何て利己的な人間だったか気が付いたんだよ。
逆境を誰のせいにもしないで、そこから逃げ出そうとしないお前に感心してたら、俺は自分がいつも誰かのせいにして、嫌なことから逃げ出したいと思っていることが分かったんだ」

「亮にそんな辛い時期があったんだ。亮はいつも皆から好かれて、ずっと順調だったんだろうと思い込んでいた。
でもそんなこともあったから、亮はきっと昔にも増して優しいんだね」

< 111 / 137 >

この作品をシェア

pagetop