優しい雨
私はすぐに自分のポーチをまさぐって携帯を取り出した。

発信元は夫の病院からだった。

「はい、小泉です」

「奥様ですか?杉井です」

杉井さんには珍しく慌てたような口調だ。

何かあったのだろうと私は直感した。

「あっ、お世話になっています」

「申し訳ありません。急なことですが小泉さんが、ご主人がお怪我をされまして、いえあのう、もう処置はいたしましたのでご心配されるようなお怪我ではないのですが」

「えっ、怪我をしたのですか?院内でですか?」

「はい、そうなんです。こちらの目が行き届きませんで、奥様には大変申し訳ございませんが、病院の方までいらしていただけないでしょうか?」
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