優しい雨
「今からですか?」

「はい。できるだけ早くご報告と今後についてご相談させていただきたいので。あっ、ご主人は本当に怪我と言いましても重症ではありませんので、その点はご心配なさらないで下さい」

杉井さんは言葉を選びながらも、どうにか私を早く病院へ向かわせるようと焦っているようだった。

一生懸命な杉井さんに私は申し訳なさを感じて答えた。

「すぐにそちらに向かいます」

電話の後、私は顔を上げて彼を見た。

彼は少しも動揺することなく、私の言葉を待っている。

「病院に呼ばれたから行かなきゃ。夫が怪我をしたみたいなの。怪我自体は大したことはないってスタッフの方は言ってるんだけど・・・」

「送るよ」

彼は立ち上がりながら言った。
< 115 / 137 >

この作品をシェア

pagetop