優しい雨

そんな理不尽な考えが、頭をもたげた。

すっかり病気が良くなりのは無理…言葉は私の頭の中で何度も繰り返され、ショックで心が荒んで行く様だ。

修一の病気が治らないのは先生のせいじゃない…分かっているのに、私は悔しいような、憎悪のような感情が込み上げて来た。

「私共も今後はご主人の自殺企図には充分に注意を払って、時間をかけて治療を進めて行くつもりですが、奥さんにもご主人の病気が良くなるまでにはまだ長い時間が掛かることを覚悟していただかなければなりません」

私は自分の暗い感情を押し殺して、先生に尋ねた。

「あのう・・・なぜ夫はそんな風に自分を傷つけて、死にたがるのでしょうか？」

「まあもともとうつ病という病気自体が自殺念慮を引き起こすものですからね・・・自分は生きている価値が無いといったような劣等感だとか自責の念みたいなものにかられて、そういう行為に走ってしまうんでしょうね」

先生がそう言った後、杉井さんが間髪入れずに報告するかのように言った。