優しい雨
私達は携帯電話の番号とメールアドレスを交換して車を降り、病院のロビーで別れた。

別れ際に彼は私に

「身体に気を付けて。電話するから!」

と声を掛けた。

「うん、ありがとう!」

私は久しぶりに軽快な気分になり、さっきまでの後頭部の重苦しさも忘れて、自然と微笑を浮かべていた。

そしてすぐにトイレに入って、洗面台の鏡で自分の顔を見た。

確かに心配されるような顔色をしているかもしれない。

しかしそのことよりも、鏡に映る自分の笑顔を見て、修一の面会の前に笑っていることなんて今までは一度もなかったことに気が付いた…
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