優しい雨
家に帰って一休みした後、私はシャワーを浴びてから髪を乾かし、鏡に映った自分を久しぶりにまじまじと見つめた。

すると浮かれていた気分がちょっと沈んでしまった。

目の下にははっきりとした隈、肌は艶がなく顎には小さな赤いぷつぷつとした吹き出物が散らばっている。

保険会社の仕事に行く前はいつも化粧をしているが、ほとんど習慣のように短時間で最低限のことしかしていないので、自分の顔をきちんと見るのは久しぶりだった。

私は少しでも顔色が良く見えるように丁寧に化粧をし、そしてこれもまた久しぶりに手の指にマネキュアを塗ろうとした。

しかし爪の周りがささくれ立っていて上手く塗れず、良く見ると爪もひび割れている。

マネキュアは諦めて、代わりに薬用クリームを指先に塗り込み、私は待ち合わせの場所へと出掛けた。
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