優しい雨
私はドキッとした。こういうことでもない限り入れない・・・その言葉は内村君に彼女がいないことを仄めかせる。

しかしすぐに自分は結婚しているのに何を考えているのだろう、馬鹿だなと思う。



半個室のような部屋に通され、メニューを見ると普段食べなれない料理が並んでいた。

文字だけではどんなものなのか分からないものもあり、私は少しわくわくした。

ビールで乾杯した後、二人はバーボンをボトルで注文し、苦みのあるお酒は苦手だと言った私にはカクテルを勧めてくれた。

二人ともお酒は結構、強そうだ。

私はカシスオレンジを飲みながら、生春巻やカルパッチョなど最近全く食べていなかった料理を口にした。

最近の私の食生活といえば外食もしないし、かといって調理もほとんどしないので、出来合いの決まったものしか食べていなかった。

私は独りで暮らすようになってから食にあまり興味が持てず、何が食べたいと思うことも、食事をして美味しいと感じることも無くなっていた。

しかし久しぶりの友人とお喋りしながら食べる料理の数々は、私に無意識に「おいしい!」と繰り返し言わせていた。
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