優しい雨
子供がいなくても私達はそれなりに、自分たちの生活を楽しんでいた。

修一は休みの日には毎週のように、山や渓谷へハイキングに連れて行ってくれた。

季節の変わり目には六本木や表参道で、少し高価な次のシーズンの外出着を私に買ってくれたりもした。

生真面目すぎて頑固なところもあるが、私にとって年上の頼れる夫であった。




その夫が心の調子を崩したのは、今から一年と三ヶ月くらい前のことだった。



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