優しい雨
「俺と二人で居ると気詰まりするのか?」

私は何て答えてよいか分からず、何も言えないまま彼の顔を見た。

少し上目使いに私を見る、彼の茶色の瞳が魅力的だ。

彼は座れよと言うように私の左腕を軽く引いた。

私は彼の瞳に惹きつけられるかのように、もう一度ソファーに座り直した。


すると彼の手が私へと伸びて、髪に触れたかと思うと次の瞬間、そっと私の首を支えるようにして引き寄せた。

優しいキス。

そして彼は唇を離すとかすれた声で言った。

「またありさが好きになった」

そして私には何も言わせず、また柔らかく私の唇を塞ぐ。

彼の唇の感触に私は、もしかしたらこんなに優しいキスは生まれて初めてかもしれないと思った。

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