優しい雨
《今仕事が終わって、帰るところだよ。今日はきちんとご飯食べたか?明日はなるべく定時で上がるようにするから、約束通り一緒に食事しような。何がいい?》

メールの文字を見ただけで胸がときめいてしまう。最近、私はまるで初めて彼氏が出来た女の子のようだ。

精神の状態が本来の中年の自分からどんどんかけ離れていくようで、私は自分の事が可笑しくて笑ってしまうこともあった。



なぜか、彼と付き合うことに不思議と罪の意識は余り感じていなかった。

以前から、世の中の一般的な常識通りに、どんな形であれ不倫はいけないことだと思っていた。

今までに不倫をしたいなんて思ったことは一度もなかったし、自分がそういうことになるなんて考えたこともなかった。

勿論、今でも夫のある身分で彼と愛し合ってしまった自分は許されないことは分かっている。

社会の中で私たちの関係は不条理なものだということも分かっているつもりだ。
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