優しい雨
「調子はどう?」

訊いてからまた同じ事を言ってしまったと私は思った。

しかし毎週の面会でなんと声を掛けていいのか本当に分からなくなっているのだ。

「何となく少しだけど気持ちが上がってきたような感じがする」

「本当?薬が合って来たのかな?」

「まだ、分からないよ」

修一は自信なさ気に眉を八の字にして、照れ笑いしているような表情をした。

いつもより少し声のトーンが高く声量もある。

ひどい時は声が低くて小さくて何を言っているのか全く分からなかったこともあった。

その時に比べると今日はほぼ人並みに会話ができていると言ってもいいくらいだ。




< 70 / 137 >

この作品をシェア

pagetop