優しい雨
「外は雨が結構、降ってきたみたいだね」

「そうだね。今日は一日降っているみたい。梅雨に入ったから大変ね。雨が続くと辛いでしょう?」

どれほど影響しているかは分からないが、一般的に言われているように修一も入院前は雨の日には寝たきりになることが多かった。

「大丈夫だよ。それよりバッグが結構濡れているみたいだけど、ここまで歩いてきたのか?」

ジーンズの生地のような厚手の布で出来ている私のバッグは、雨に濡れて斑な模様が出来上がっていた。

「うん、歩いて来たけど、でもいつも歩いているよ」

「そうなんだ…俺が外泊してた時は駅からタクシーを使ってたから、ありさもタクシーで来ているのかと思ってた」


夫は家の経済状況を把握できていなかった。

タクシーに乗る余裕は今の私にはない。

しかしそのことは悟られまいと私は明るく言った。

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