優しい雨
私は彼と会えなくなっても大丈夫だろうか?

夫の病気が治ることだけを願う寂しい生活に戻ることを想像すると、私は胸が苦しくなくなった。



品川から川崎の駅に出て、彼が迎えに来てくれる場所へ向かう途中、ドーナッツを買って雨にぬれない様に胸に抱えた。

彼は駅のすぐ近くの百貨店の前の道路に車を止めて待っていてくれた。

私は雨からドーナッツを守ったものの、肩や足元は濡れてしまった。

車に乗り込んだ私を見て彼は

「お疲れ様。ああ結構、濡れちゃったなあ。よく考えたら駅から直結している駐車場に待ち合わせればよかった。ごめんな」

と言って、ハンドタオルで髪や肩についた水滴を払ってくれた。
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