優しい雨
「うーん、でも亮は明るいから。ほとんどいつも笑ってたから、その笑顔が自分に向けられているかどうかなんて分からなかったよ」

「そうか、なんか俺損してるな」

相変わらずあっけからんとそんなことを言う彼に、私はちょっと噴出してしまい、可愛いな、なんて思ってしまう。

あの頃も亮と一緒にいて、今と同じ感覚に包まれたことがしばしばあった。

十数年も経って、もうあの頃とは全く違う環境と立場でこうして一緒居るのに、あの頃と全く同じ感情になれるというのはとても奇妙な感じだ。

もし本当にあの時、自分の気持ちに素直になっていたら、運命は変わっていただろうか。

もしかしたら今みたいな時間を、あの頃にも持てたのだろうか?




いや、あの頃の私は人気者だった彼に、とても自分の気持ちを打ち明ける勇気も自信もなかった。

仲間として心地よい関係が崩れてしまうのが怖くて、そんな素振りさえ見せてはいけないと頑なに思っていた。

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