優しい雨
雨はますます強くなって来たようだ。

時々窓を強く叩く雨音が、TVから流れる音楽に勝っていた。

窓の外の景色は雨に遮られて、ただ白いばかりだ。

しかし思いのほか、こんな悪天候の時に、二人で部屋の中にいるのは気分がいい。

落ち着くというか、ちょっとだるいけれど何かに守られているような安堵感がある。

一人の時はひたすら憂鬱で後頭部が重苦しかったのに、彼と2人で居るだけでこんなにも気分が違うものなのかと、私は感慨にひたった。




彼は窓の外を眺めていた私の頬に、そっと手を当てて自分の方へ向かせる。

彼の茶色い瞳を目の前にして、私は自然に目を閉じた。

ふとキスの最中に、彼に話そうと思っていたことを思い出して心が揺れた。

< 89 / 137 >

この作品をシェア

pagetop