ほっとちょこれーと *【完】
「心結ちゃん?」
「あ……ごめん」
「体調でも悪いの?なんかボーっとしてたけど…」
「いやいや大丈夫♪」
「生地 裏表が反対だよ」
「………。」
手元を見るといつの間にか裏表逆で、しかもかなり縫い付けてる。
全然 大丈夫じゃねーし!!
あ~………最初からやり直しだ。
「都築の衣装なんだから丁寧にやれよなぁ」
「う…うるさいっちゃんとやってるもん」
「貸してみ」
颯斗があたしの手からひょいっと布を取り上げて
プツン プツンとミシン糸を切っていく。
「男のくせに器用だね 颯斗」
「心結が女のくせに不器用なんじゃね?」
むかっ
ボーっとしてただけだもん。
「なんてな。心結が器用なのは俺が1番わかってるつもり、ただガサツだけどな」
「……。」
はいと糸をほどき終えた生地を渡される。
「手伝おうか?」
「いや 大丈夫、颯斗は台詞覚えなよ」
「んーわかった」
颯斗は立ち上がって役者組のところへ戻って行った。
「心結ちゃんたち付き合ってるみたい」
「お似合いだよね~」
衣装係の子たちに冷やかされる。