ほっとちょこれーと *【完】


手を離す。


「今しかないよ」

「………。」

「好きなら心結先輩のこと離したらいかん」




言われなくたってわかってる。



でも俺には何があっても先輩を守り抜く自信がなくて

先輩がいつまでも俺を好きでいてくれる自信がなくて……


こうすることしかできなかった。




振られるのがわかってて告白なんてした中学生の俺のほうが


ずっとずっと強かった。




「追いかけろや」

「………でも」



また瑞希を裏切ることになる。




「行けばいいじゃん」

「………え?」

「うじうじしてないで行きなさいよ」




瑞希だった。



「その代わり」

「………。」

「あたしのこと 許してね?」

「………え」



俺が許すの?



俺を許すのが瑞希なはずのに……

立場がおかしい。




「友達でいいからこれからも一緒にいてね」

「……それでいいの?」


「うん」



瑞希が笑う。

今までのことが何事もなかったみたいに。



「あたしにも大切なものがあるって気づいたんだ」



視線の先には郁哉の姿



「だから翼はもういらない」

「………え?」


郁哉と?
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