ほっとちょこれーと *【完】
「心結先輩っ」
息を切らせた翼の声
あたしは立ち上がらないで顔だけを上げる。
「待った?」
「うん」
「ごめんなさい」
記憶を辿るような同じやりとり
1つ1つの行動がフラッシュバックする。
あたしたちが始まった場所
あれからもう3年がたったんだね……
「俺 間違ってた」
「………。」
「別れて距離を置くことが心結先輩のためだと思ってた」
暗くて翼の表情は見えない。
「それが瑞希のためだとも思ってたのに……」
「……翼?」
「違う方法もあったのに俺……まじで馬鹿だ」
翼が泣いているような気がした。
あたしはゆっくり立ち上がる。
「先輩のそばにいたい」
「…………。」
「離したくない」
翼の言葉
わかってた……
翼があたしのために別れたこと
あたしのために瑞希ちゃんのそばにいたこと
過去の翼はたしかに瑞希ちゃんを傷つけたかもしれない。
だけど
全部わかってたんだよ?
翼がどれだけあたしを好きなのか……ちゃんと知ってる。
ちゃんと伝わってるんだよ?
こっちまで泣きそうになる。