幸せ物語 KANON
「捨てんなよ」
「…え?」
捨てんなよ――?
「いや,あのさあ。
やっぱ傷付くっしょ,
そんなことされちゃ。
リュージ…本気になるの
はじめてっぽいし。
だからさ…」
「捨てないよ。
あたし,隆司が大切
だもん」
「そっか,よかった」
そんなとき,声が
聞こえた。
「ユキぃー!?」
「あっ,はいはいはーい」
それはまさしく,
隆司の声。
あたしを探していた
んだ。
「ここにいたんだ,
もう探したよ!
哲となんのはなし
してたの?」
哲也さんのほうを
見るとしーっ。
恥かしいもんね。
「ひみつっ」
「はあ!? なんだ
それっ!」
こうして始まった
あたしたちの関係…。
だけどそれは
思ってた以上に
難しいものだった――。