幸せ物語 KANON
あたしは会場に戻って,
自分の座席近くを
しらみつぶしに探した。
…あたしのケータイ…。
「あったあ!」
立ち上がった瞬間…
後ろに誰かの気配を感じた。
……誰?
振り向いた瞬間,
心臓が止まるかと思った。
目の前にいたのは,
秋晴隆司だった。
「りゅ…隆司……?」
声が震えた。
ダイスキな隆司が目の前にいる。
信じられないの一言だった。
隆司は,ひとりで
ステージで踊りの練習を
していたらしくて,
息は荒く,汗をかいていた。
「…名前は?」
「にっ…新名花音デスっっ!!」
隆司は,ふっと笑って
近付いてきた。
「えっ…?」
ふいに声を洩らしてしまった。
すると,隆司の顔が
近付いてきて―――。
17歳,初めてのキスだった。
「あ……?」
「決定,俺のカノジョ♪」
こんなんで,
あたしと隆司は出逢った。