【短】スペアリブ
「お兄?」
美雪はとても恐くなっていた。



「おいおい、兄貴の顔忘れたわけじゃないだろ?なんだ、そのビックリ顔は!」



お兄と呼ばれたそのスーツ姿の人物は町田健士(まちだたけし)という名で、正真正銘美雪の実兄だ。



「お前ゆっくりしていればいいのにわざわざ料理してくれたんだな」
健士はそういうとキッチンへ行った。



美雪は脳が急速に覚醒していくような感覚を持った。


……やっぱり、あれは私が作った料理?



鼓動は徐々に速くなり、ジワリと額に厭(いや)な汗が滲(にじ)んだ。



「おーい、美雪、ヒーターちょっと止めとくぞー!……お!これうまいな」
キッチンから健士の機嫌の良い声が聞こえた。
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