天使と私の物語 -「Dの物語」
7-5 On The Line
ふいに
電話のベルが鳴った
高い音が寝不足の頭に響く
誰だろうこんな時間に
「ハロゥ、どなた?」
「…」
返答がない
いたずら電話だろうか
「切るわよ」
受話器を置こうとした
「ディー、僕だよ」
この声は
「おはよう。‥って言っても僕はまだ寝てないんだ。さっき最後のゲストが帰ったばかりで」
やはり彼だ
「そう。あなたが楽しい時間を過ごせたのならいいのだけど」
彼にまだ”おめでとう”を言っていないことを思い出した
「ディーが僕と踊ってくれていたら、きっともっと楽しかったよ」
急に姿を消した私をなじっているのだ
「何も言わずに帰ってごめんなさい。ちょっと足が痛んで・・」
言い訳がましいが嘘は言っていない
「その痛む足でずいぶんと早く帰ったんだね。すぐに追いかけさせたけど見つからなかった」
「…」
「ありがとう」
「え?」
「写真集。すごく気に入ったよ。僕の夢はいつか月に行くこと、宇宙の神秘に触れることなんだ。またその夢が広がったよ」
「喜んでもらえてよかったわ。今さらだけど‥お誕生日おめでとう」
「ありがとう。すっごく大きくて綺麗なバースデーケーキをシェフが用意してくれたんだ。ディーにも見せたかった」
「まぁ、私も見たかったわ」
「僕が1番にディーをダンスに誘うつもりだった」
「あ‥」
やはり彼は見ていたのだ