天使と私の物語 -「Dの物語」
あまりに突然で驚いてしまったのだ
あんな態度を取るつもりはなかった
取るべきではなかった
もっと冷静に、大人の対応が出来たはずだった
彼は、若者らしい恋の喜びを
ただ無邪気に打ち明けたかったのだ
“信頼できる大人”に
彼を、傷つけてしまった
私が“冷静で知的な家庭教師”でいられなかった原因は
きっと私の彼への特別な感情と無関係ではない
急に“女”の顔を覗かせた私に
彼はさぞ驚き、がっかりしたことだろう
どうしよう
私はもうここには来れないかもしれない
職を失うことに対する恐れより
彼に会えなくなることに対する恐れの方が
ずっと大きいことが
私の彼への特別な感情の存在を
改めて肯定していた