天使と私の物語 -「Dの物語」
ぬるり
慌ててその正体を確認すべく眼を落とすと
「ヒャーーッ!!」
大蛇が箱から半身を出していた
私はぶんぶんと腕を振り、
大蛇の腹だと分かった感触を
己の感覚から引き剥がそうと躍起になった
彼が笑い転げているのが横目で分かる
またあの特徴ある笑い声が部屋中に響いている
予想以上のしかけに、
冷静な対応が間に合わなかった
「全く、あなたったら!ひどいわ!」
「僕のペットを紹介したかったんだ。驚いた?」
「ええ、もちろんよ。どれだけ人を驚かせれば気が済むの。こないだだって・・・」
ハッとして慌てて口をつぐんだ
聞こえてしまっただろうか
失態だ
「あれは驚かそうとしたんじゃ・・」
彼が小さくつぶやくのが聞こえた
大蛇が触れた手をハンカチでぬぐう間に
呼吸を整える
一秒も早く失態からの立て直しをはかりたい私は、
わざと音を立ててテキストのページをめくった
「さぁ、58ページを開いて」
アルパカがゆったりと歩き回る庭が見える
大きな窓を背に
いつもと変わらぬ時間が流れ始めた