天使と私の物語 -「Dの物語」
「母とのインタビュー(面接)で報酬額の引き下げを提案したんだってね」
「お母さま?」
私は驚いた
あの時、面接の時に会った年配の女性は
彼の母だったのか
「母も僕もとても驚いたんだ。そんなこと言う人に会ったのは初めてだったからね」
驚いたのはこちらの方だ
面接の時に提示された報酬額は常識を超えていた
もちろん、当時は採用が決まっていた訳ではなかったので、
“もし貴女にお願いするとしたら、この金額です”
と提示されたものだったが
私は仰天して
「そんなに頂けません。私を推薦してくださったA教授は素晴らしいお方ですが
私はその足元にも及ばない人間なのです」
と言って提示金額の見直しをお願いしたのだ
「それに、レジュメももう読んだよ。素晴らしい経歴だね」
彼は私が出したレジュメにチラと目をやった
「母が君を、ディーをとても好きになったようだよ。僕にとって母は完璧なんだ。愛してるし信頼している。母はいつも僕の為に最良の選択をしてくれる」
「お母さまが私を‥それは光栄だわ」
グラント教授からは何も聞いていなかったので
素直に嬉しかった
「でも母はひとつ僕に隠していたことがある」
「あら、何かしら」
「ディーがこんな魅力的な美人だってこと」
中庭に面した暖かい光が差し込む窓から
小鳥の歌声が聴こえた