天使と私の物語 -「Dの物語」
第3章 - Childhood

当初の私の予想をくつがえし
彼はとても“良い生徒”だ


私の話に真剣に耳を傾け
理解も早い
質問も的を得ている


殺人的なスケジュールの中
宿題もこなす
広い範囲でいろいろなことに興味を持っているようだ


“天は2物を与えず”とも言うが

彼がもしアカデミックな道に進んでいたとしても
成功を収めていただろう、と思う


80分授業を2コマ行うので
間に休憩を取る

休憩中、私はコーヒーを
彼はオレンジジュースを手に
とりとめのない話に花を咲かせる


音楽はもちろん
映画・絵画・アニメ・ゲーム‥と
彼の守備範囲は広い

その博識には舌を巻く思いだ


時には一緒に美術専門誌を眺めたり

自然科学雑誌に発表された論文を読んで
人類の新しい発見に興奮したり

ディズニーの好きなキャラクターの話で盛り上がったり

彼が作詞中の歌詞を見せてもらって感想を言ったり


日を経るごとに私たちは次第に心を開きあい
互いのプライベートについても話すようになっていた


彼は私の“普通の子供時代”の話を聞きたがり
私は彼の“驚くべき特殊な生活”の話に引き込まれる


彼を知れば知るほど実感するのは
彼も“普通の若者”となんら変わりがない、ということだ


確かに特殊な環境下には置かれているが
それを除けば、普段私が大学で接している
同年代の若者たちとなんら違うところはない


ただ、普通の若者にはわけもなく出来ることが
彼にはなかなか出来ないことが多かった
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